イタリアには神曲、日本には原爆という題材がある

昨日世田谷パブリックシアターで観たカステルッチの『神曲 煉獄篇』は素晴らしかった。トラウマを与えた者と与えられた者双方の救済、というようなテーマかと思うが、芸術は必然的に、ほとんど全部がそこに行き着くのだという確信を深める。テクスト系の舞台というよりはアート系の舞台で……いや、そんなカテゴリーなんかどうでもいい、この、蜘蛛の糸を慎重につなぎ合わせていきなり爆弾を作り出すような凄い才能に、ただただ驚いた! 他のパートを観そこねているので(自分の迂闊さが本当に悔やまれる)多くを語れないのであるが、いま世界的に知とか芸術とかが地盤沈下しているのではないか、という杞憂をぶっ飛ばす、本当に刺激的な作品だった。こんな優れた作品を招聘してくださった皆様ありがとう、と帰り道に心から思った。
あと、もう一つメモしておくと、図書館で出会った『絵で読む広島の原爆』(那須正幹西村繁男/福音館書店)という絵本が凄い! わたしは前から西村繁男さんの絵は大好きだなと思っていたのだけど、今まで存在を知らなかったこの本、まさにマスターピースだと感動。膨大な手間をかけて丁寧に作られた本(絵本とはいえ、専ら子供向けというものではなく、当然大人も対象だと思う)だということが本当によくわかります。(文=目黒条