老いとか若さとか

このひとつ前、ふたつ前の記事にゆるやかに関連していますが――最近、日本でも、人々がアンチエイジングだとか異様に言い立てるようになったけれど、それはアメリカから来た文化だと思う。ヨーロッパ人は、アメリカ人ほど若さに取り憑かれていないような気がする。
といっても、フランス人でも「女は若ければ若いほど価値がある」なんて(主に性的な本音から)言う奴もいるんじゃん、ということを、わたしはミシェル・ウエルベックの小説から学んでちょっとがっかりしたのだけど、それはたぶん限定的な話題の中での見解であって、一般的には「成熟した女性」が「ただの若い娘」より素敵だという価値観もちゃんとあるはず。
老いとか若さとかいうのを「マーケティング的ものさし」にし、愚劣な流行なんかに乗って派手な消費行動に出てくれるから若者が神様、とみなす考え方は、われわれ個々人の人間的な本質とは何ら関係のないことだ。「わたしは誰か」「どういう人間か」ということに自信を持って生きている人間は、年とって卑屈になったりとか絶対せず、堂々と「わたし」であり続ける。そのお手本の一人がアニエス・ヴァルダだ!
アニエス・ヴァルダさん本人に『ジャック・ドゥミの少年期』プロモーションの際に直接会われた岩波ホールのK様によれば、彼女の素顔は『…浜辺』そのままに、芸術家と少女の顔を兼ね備えた魅力的な様子だったとのこと。さらには遅くまで仕事してる皆さんを気づかって「あなたたち早く帰りなさい」と言ってくれるお母さんの顔まで見せていたそうで、そのエピソードを伺って、「なんて素敵なんだ!」と改めて感動してしまいました。ひらひらした水玉のスカートもお似合いだったそうです。(文=目黒条