BGM

 「仕事する時に音楽を聴きながらやる」という人がいるようだけど、到底信じられない。わたしには絶対それはできない。他人の音楽を聴いて何か書いてたら、確実にその他人の世界に引っ張られてしまうでしょう。要は、わたしは「ながら」というのが全然できないのだ。音楽を聞く=全身全霊で聞く!自分も一緒に歌いながら聞く!という感じになってしまって、聞き流せなくなる。でも、「ながら」系の人っていうのは、バックグラウンドに雑音がないことに逆に緊張してしまい、ノイズを立脚点にしないとリズムが作れない!自己主張の叫びが生まれない!という感じなんだと思う。これはもう人間のタイプが違うというか、創作方法論の質が違うというか、そういう話であって、どっちがいい悪いとかいう世界ではない。
 それでも、小説の中で音楽が聞こえてくるような場面というのはある。そういう音楽は、わたしの場合は、全部手づくりだ。他の人が作った音楽を借りてくるっていうのは、原則的にしない。一部例外を除き、オリジナル曲で勝負。たいがい英語の歌詞が浮かび(どうしても好み上ロックが中心になるので、日本語はあまりのらない)、それに自分で曲つけて、場合によってはPVみたいなものの映像の絵コンテ(笑)まで考えて、じっくりと制作している。そうやってちゃんと精密に作詞作曲実演したものを、脳内でBGMとして流す。それが作中で流れるのは(歌詞とかをトレースするのは)ほんの一瞬なんだけど、曲をちゃんと作るのと作らないとのでは全然違うので、ものすごく真剣にやる。もうメチャクチャ手間暇かけてます。――と書いているのが、どれのことなのか、次作を読んでいただければおわかりいただけると思うので、どうぞお楽しみに。…その前に現在発売中の『カルト…』をちゃんと買ってくださいね。たぶんこれが一番、味付けもマイルドで読みやすいものになっているので。

カルトの島

カルトの島

(文=目黒条)