S.L.C.PUNK!!

B級映画『S.L.C.PUNK!』をビデオで見た。S.L.C.はソルト・レーク・シティーの略で、つまりモルモン教の聖地でパンクをやる話。よりによってお酒も売ってないようなアメリカ最強の保守的地帯で、頑張ってパンク。『さらば青春の光』そっくりにスクーターで走ってるモッズの後ろに、本物の農業用?スクーターで走ってるオッサンが… 
 と、最初の方はコメディタッチだが、後半になると、やがて楽しい日々に暗雲たちこめ、仲間はオーバードースで死に、パンクは卒業――という青春映画の定石をたどって凡庸になってしまった。結局、主人公はハーヴァードの法科に進学してしまうんだけど、パンクなんて所詮ブルジョアの子の遊びじゃねえか、という批判もちょっと含まれている。自分の周りのことを振り返ってみても、音楽だの演劇だのやってた人は、みんなある程度いい家の子ばかりだった。本当に家が貧乏かつ反抗的という人は、ヤンキー(欧米だったらネオナチ、スキンヘッズの類)になるんだろう。バンドとかをやって「既成概念への反抗」をするには、実はある程度の教育・教養が必要だったんだなあ、と改めて思った。(文=目黒条