冬の小鳥

先日、ウニー・ルコント監督『冬の小鳥』を試写で拝見。韓国の児童養護施設を舞台にした映画で、養子として韓国からフランスへ渡った女性監督自身の自伝的要素が入っている。
まだ幼いうちに親に捨てられ、心ない人に「孤児」などと呼ばれるような状態となり、裕福な欧米人に養子縁組されるのを施設でじっと待つという、親元で育っている人には想像もつかないトラウマ的な経験――この辛さに正面から取り組んだ、感動的としか言いようのない作品。もちろん、見ていてとてもやる瀬ない気持ちになるけれど、監督自身があえてトラウマの現場回帰をしてまで、真剣に作り上げた嘘のない、真正な表現が胸を打ちます。最近のハリウッド映画などでは、「どうだ、巧みだろう!」といわんばかりの奇をてらったストーリーが横行し、作り物くさいエンターテインメントがわたしたちを白けさせるけれども、そんな時代に、こんな宝石のような映画がちゃんと作られている!ということに、わたしは強く強く心を動かされました。(文=目黒条