すべてはギリシア悲劇

静岡に行ってきました。ムアワッドさんの『頼むから静かに死んでくれ』も、宮城さんの『メデイア』も、表現スタイルは異なれど、どちらもギリシア悲劇で(頼むから…はムアワドさんの戯曲だけれど、そこに含まれるソフォクレス成分は非常に強い)どちらもものすごく面白かった!
メデイアに関しては、考えてみたら、舞台で上演されているのを見るのは、十年以上前に新国立劇場ギリシア国立劇場の招聘公演を見たとき以来だった。宮城さんのメデイアは、とにかくわかりやすく、目にも鮮やかに演出されていて、緑に囲まれ、なまなましく息づく植物の呼吸にいだかれた野外劇場という環境の中、生きたパトスというものを見せてくれました。
で、やっぱりギリシア悲劇だねすべては!と興奮しながら帰ってきた次第。テレビ的な軽いものに席巻されて、強度の高い情念を扱わなければそれは芸術ではありません、ということを誰も言わない世の中になってきてしまったけれど、日本でも教育の中にギリシア悲劇を取り入れるなどして、なんとか立て直さないといけないのかもしれません。(文=目黒条