セラフィーヌの庭

セラフィーヌの庭』を試写で拝見。セラフィーヌ・ルイという、アンリ・ルソーと同時代の「素朴派」画家――というか、ある意味アウトサイダーアーティスト的な、夜自室で孤独に絵を描く家政婦さんが、ぐうぜん収集家に見出され、パトロネージュを受け、経済恐慌で支援を打ち切られて精神病院に収容されるまでの話。
わたしはセラフィーヌ・ルイのことは全然知らなかったのだけれど、ヘンリー・ダーガーとか、郵便配達夫シュバルとかにかねてより大変興味があり、社会的フレームのまったくないところで個人的に、熱狂的に芸術活動を繰り広げるというのがどういうことか、いつも考えている。一般的には「社会のコードを考慮してないものに、たいした商品価値はない」と受けとめる人が多いのだろうが、わたしはそういう風には考えていない。むしろ、逆に、特定コンテキストの中でしか存在しえないものより「純粋芸術」なのかもよ、とさえ思う。といっても、この映画は、そういう七面倒くさい議論とは関係なく、ストレートにセラフィーヌの一時代を描いた、誰もに訴えかける映画です。(文=目黒条
(あとで追記――これを書いたあと、この映画のレビューをご依頼いただきました。上記は、一を聞いて十理解してくださるブログ読者様用ブリーフノートですが、これを敷衍した、もう少し親切な文章が7月24日発売の「クロワッサン」に出ますのでちょっと待っててくださいね。)