河童と降霊術

うちから歩いて一分、走って数秒の距離にそう小さくない病院(入院できるような規模の)がある話は、以前書いたかもしれない。
そのせいで、ということかどうか分からないが、周辺に「お化けが出る場所」がけっこうあるらしい、という情報を近所のお店で入手。そういう世界の話が嫌いでない割には、生まれてから一度も幽霊というものを見たことがないわたしは、今度こそ是非、とばかりに物見高くそのスポットに(暗い時に)行って目をこらしてみた…けど、やっぱり何も見えず。わたしの微弱なサイキック能力は「予知」方面だけにしか働かないんだな、と悟りました(オーラ視はたまにできるんだけど)。というか、浮遊していらっしゃる方なんかは見えないという体質でいられる方が幸せなのかもしれない。いちいち見えたり話しかけられたりしたら、とても大変なはず!
話として関連しているのかいないのかわかりませんが、二十世紀初頭ぐらいまでの間にイギリスその他のサロンで流行していたものに、「降霊術」というのがあります。ノエル・カワードの『陽気な幽霊』なんていうのは、完全に降霊術パーティーを舞台にしていて、後妻がいるところに前妻の幽霊が降りてきてしまう、という話ですが、現実の降霊術というのは大半がインチキで、降霊術師なんてマジシャンか詐欺師みたいなものだったという説もあり…(それで「霊と関連しているかわからない」とわざわざ書いたわけです)。
で、わたしが言いたかったのは(やっと本題)、芥川龍之介の『河童』に降霊術の場面があるのをご存知ですか?ということ。時代の流行を取り入れたということかもしれないけれど、その他の部分においても、『河童』はとにかく奇想に満ちていて、何度読んでも面白いです。岩波文庫に入っていて、短く薄く価格も格安ですので是非試してみてください。国文学に強くないわたしが、しかもこんな有名作なんかを推薦するのもおかしな話ですが、意外とみんな読んでないでしょう? わたしも最近まで読んでいなかったので、なんて勿体なかったんだろうと思いました。
この話、もしかしたら前も書いたかな、と今自信がなくなりましたが、重複してもいいやという気がするほど好きなので、もう一度かもしれないけれどお薦めしておきます。(文=目黒条