祭壇化する書斎

この季節、本物のアーティストからいただいた本物のアートポストカードが増え、それを額に入れて飾るので、書斎がちょっとしたギャラリーのような状態になっている。ありがたき幸せだ。美術作品はすなわち精神の可視化なので、受け手側がその気にさえなれば、作品にかなりの次元まで引っ張り上げてもらうことが可能。作家ごとの個性が違うので、あちらこちらに離してレイアウトしているのだけど、どれを見ても素晴らしい気分になって、胸がどきどきします。芸術の守り神に囲まれている実感。なんだか、お金持ちの人が絵を買ったりする気持ちがわかるような気がしてきた。
本棚に並ぶ本も(うちは特に濃密な本が多いです)静かに何かを発散しているのかもしれないけど、しかし本の文字というのは当然のことながら開いて読まないと意味生成しないもので、絵のようにそのままの状態でダイレクトに語りかけてくることはない。背表紙がこちらに絶えざる暗示(圧力?)をかけてくる、というだけで。…それだけでも十分に魔術的なのだけど。
ヴィジュアルアートと書籍と、両方あって初めて、書斎という空間が祭壇化する、ということなのでしょう。ここまで揃えば、あとは床が自然にムービング・レーンのような状態になって、それに吸い付くようにして(自分がピューマになって)どこまでも走っていけそうな気がする。(多分。)(文=目黒条