サブカルチャー

かつてのカウンターカルチャーというものは、表現者側にとっては「本道(ハイカルチャー)を知っての上の、アンチテーゼ」だったし、受け手側(支持・消費する側)にとっては「本道を知っての上の、箸休め」として面白がるものだった。日本ではいつしかカウンターカルチャーが「サブカルチャー」に変質し、「こういうのだけが好きだから、これ以外にはなんにも知りたくない。知らなくていい。勉強とかしなくていい」という気分で支持される一神教になった。
そうなると、サブカルチャーほど為政者にとって都合のいいものはない。人々が歴史とか文化とか何も勉強せず無知のままでいてくれたら、雰囲気だけで支持してくれて、好きなように束ねやすいからだ。「サブカル大好き」とか言ってくれたおかげで、その辺の構図がたいへんわかりやすくなった、というのが、現首相の唯一の功績かと思う。ポピュリズムをやろうと思ったのに、間違えてポピュリズムのからくりをバラしてしまったということ。(文=目黒条