言葉、言葉、言葉

「ここ最近」という、日本語として間違った奇怪な表現が、テレビでもネットでも印刷物でも、最近(←正しくはこちらだ。「ここ」は要らない!)ものすごく頻繁に使われている。もう我慢できないという感じなので書くけれど「ここ」というのは「このところの」という限定をしている部分なので「数日」「数年」など数に順ずる表現あるいは数詞の前にしかつかないはずで、「最近」という限定的に近い過去をさす言葉と併用したら、限定をダブらせることになって、おかしいですよ! つまり「ここ数年」は正しいが「ここ昨日」とか言わないでしょう?! 英語で言うとlast few yearsが「ここ数年」なのであって、その真ん中にrecentをぶちこんだみたいな乱暴な間違い言葉に、ものすごくイライラするんだけど、なんとかならないのだろうか?
あと、これは「ここ最近」ほど怒ってはいないのだけど、テレビでコメントする学者とか評論家みたいな人たちが「リスクを取る」という言い方をしているのを「最近」何度も聞いた。take a riskの直訳という感じで、まあ何もおかしくはないけど、和訳すると「リスクを冒す」なんじゃないかとわたしは今まで思っていました。「冒す」の方が危なそうでいいのでは? まあ「リスク」とか英語のまま言ってる時点で、借り物言葉であって、純粋な日本語じゃないわけだから、どうせなら「take=取る、でしょう?」と英語そのまんまにしておいた方がいいんだよという考え方もある。しかし、こうやって日本語を少しずつ「英語寄り言語」に改造していくのも、いかがなものかという気が…。
「この言葉の使い方は間違っている!」と、親がテレビの前で一日に何度も激怒しているような家庭で育ったので、おかしな言葉にはついつい駄目出しをしたくなります。前に週刊文春に連載されていた高島俊男さんの「お言葉ですが」というエッセイが大好きだったし。しかし、「お言葉ですが」無きあとは、こういう気持ちの矛先というか受け皿というかがなくなってしまい、言葉オタク心を誰とも共有することができなくなったような感じで悲しいです。
しかし、そう言っている一方で、心の中で奇怪な造語を作っていたりもする。この夏は、自分の中で「フラペチーキー」という言葉が流行(一人流行ですが)していた。スタバの「フラペチーノ」を変形させただけなんだけど、冷たそうで生意気な奴を見ると「このフラペチーキーな女め!」と心の中で呟く、とかそういう感じです。一人でそんなことを心中つぶやいている、というのも考えてみたら孤独で寒ーい感じなので、ここに書いてみました。みなさんも使ってね。(文=目黒条