B書店における最後の買い物

 自分の本がどういうことになっているのか気になって、よせばいいのに書店に立ち寄ってしまった。A書店に行ったら、果たして、平積みだ! しかも二箇所で平積み! 新刊のところと、なぜかミステリーのところと(ミステリーだったのか?!と驚愕する著者。いや、占有場所をいただけるならこの際なんでもいいです)。こんな素晴らしい扱いをしてもらっているなんて、最高にありがたいことだ。
 しかし、うちの近くのB書店に行ったら、ない、ない、どこにもない…。(店の規模はA書店とさほど変わらないのに。)よくよく見たら一冊だけ棚差しになっていた。しかしその一冊、ご丁寧にも帯がビリって破けていて、これ、わたしの気分を沈ませるために作られた仕掛けなの?という感じの侘しい図柄。本の流通についてはよく知らないのだが、それぞれの本屋さんの仕入れのご担当者の趣味によって、品揃えがぜんぜん違う、ということなのだろうか? つまり、わたしがいつもあんなにお金を落としてあげてきた近所の本屋さんは、「目黒条なんか大嫌い派」の書店だったということ?…そうですか。今後は二度とB書店でなんか買ってやらないぞ、A書店でだけ買うことにするぞ、と誓う。
 しかし、そう言ってるそばから、親目黒派のA書店にはなかった円城塔さんの『オブ・ザ・ベースボール』が嫌目黒派のB書店にあるのを発見し(平積みの最後の方だったから売り切れ寸前な感じ、A書店ではソールドアウトだったのかも)、「…じゃあ今日を最後に、だぞ!」とトーンダウンして購入。でもこれがB書店との別れの一冊でしょう。さっき読み始めたらすごい面白く、かなり興奮、教えてくださった編集Nさんに感謝。(文=目黒条