エコロジーとポストモダンの終焉

 『デス・プルーフ』を観た日から食べたくてたまらなくなっていた悲願のメキシカンフードを、ようやく今頃、某メキシカン・レストランでお昼に食べた。ああタコス!タコス!タコス! わたしは絶叫するほどタコスが好きだ! というわけで最高にハッピーな昼だったのだけれど、よく考えたらトルティーリアの原料=とうもろこし、なので、おのずと例の「代替エネルギーのせいで食品としてのとうもろこしや小麦の価格高騰」という話題に連想がいき、笑顔が20パーセントぐらい消える。偶然なのだが、食後のコーヒーを飲みながら読んだのは『エコロジーポストモダンの終焉』(ジョージ・マイアソン/野田三貴訳/岩波書店)。
 この本は、「エコロジーポストモダンが両方終焉します」という話ではなく(タイトルの「と」のあとに読点をつけて考えるといいです)エコロジーによってモダンへの揺り返しが来て、ポストモダンが終焉するんじゃないの、という状況を皮肉に論じてみせたもの。この中で最高に面白かったのは、現代に蔓延する「エコ病理学」を、二十世紀初頭に流行った「フロイト的解釈」になぞらえてみせたところ。
 貧乏な人々が「代替エネルギーだか何だか知らないけど、こっちは食べていけなくなっちゃうんだ!」と悲鳴を上げている今、早急な事態の収拾が必要なこの状況において、正直、ポストモダン的言説に耳を貸しているヒマはないよ、という向きもあろうかとは思う。しかし。エコロジーとは自然科学、政治、経済などなど、パラダイムまたぎの問題で、最終的に誰がジャッジするものかわからない、という戸惑いが世界の中に常にある。だからといって、近代的な枠組みの「実行力」に期待する、などという逆戻りは勘弁してくれ、という思想側からの悲鳴に耳を傾ける価値は大いにあると思う。
 ランチ一回で読みきってしまうぐらいのヴォリュームの本なので、是非読んでみてください。1500円で実質的な本文100ページちょい、というこの軽さは、みんながお手軽新書しか読まない時代の、新しい思想書のあり方なのでしょう。現実問題として、四千円も五千円もする本を積ん読で終わりにするよりは、この方がずっといいのかもしれないし…。(文=目黒条