フィジカルを聞きながら

渋谷で微妙に時間が空いてしまったので、109のソニプラに寄ってコスメ渉猟していたら(行動パターンが三十年ぐらい変わっていない私。進歩がなさすぎる…)、ちょうど流れてきた音楽がオリビアニュートンジョンの『フィジカル』。アメリカのポップミュージックの伝統芸とも言うべき甲高い女声ヴォーカルが、今の渋谷にもちゃんと合っていて、とても四半世紀以上前の曲とは思えない違和感のなさだった。しかし、この曲…昔は「Let's get physicalなんて、いやらしいなあ…」と思っていたのだが、いま聞くと、セクシーなところなんかひとかけらもない!と愕然。「素敵なレストランにも行ったし、刺激的な映画も見たし、会話とかもういいからあとは身体的なことをするだけ」というような歌詞も、稚拙すぎというか、小学校の教科書に載せてもいいぐらい健全な感じだし、オリビアさんの歌唱法にもセクシーな要素はまったくない。健全デートの行く末が、たぶんがっくりなものになりそうだ…というイライラした雰囲気が表現された、上手な楽曲だとは思うのだけど、なぜここまで非セクシー? もしかしたらあの当時は時代がまだ保守的だったのだろうか? 意外すぎて考えこんでしまうわたし。いや、聞き手としてのわたしが大人になりすぎてしまったせいでそう思うだけか…? 
ちなみに、日本の歌で『オリビアを聞きながら』というのがありましたが、それはオリビアニュートンジョンがこういう派手な路線になるよりもう少し前に歌ってた、ジョリーンとかなんとかのカントリーっぽい歌を聞いている、という設定だったのだと思います。どうでもいいですが。(文=目黒条