「焚書の季節」が来てはならない

青少年健全育成条例改正案なるものの最も馬鹿げている点は、「禁酒法と同じで、法で規制すればアングラ化するだけ」という理屈がまったくわかっていないところだ。合法的に手に入るロリコン漫画(というのか?わたしはその方面にまったく詳しくないのだけど)が消滅したなら、今まではそれでガス抜きができていた人々が今度は、非合法のものを地下で求め始めるに決まっている。そしてそうしたアングラものには、生きた少女を使った(つまり被害者の存在する)幼児ポルノの含有率が高いという恐れがきわめて大きい。漫画を創作するにあたっては被害者なんか一人も出ないというのに。
もともと芸術というのには、「禁断の欲望」を描いて、それを実行できない人がそれを読んでガス抜きする、という機能も確実にある(それだけではないが)。普通の人は、「こういうのは道徳的にはいけない事だなあ…」「でもこんな凄いことできたらいいなあ…」と思いながらも、現実世界でそれを実行して犯罪者になったりはしない。よほど本格的な「異常者」(カッコつきで書きましたが)でなければ犯罪なんか実行しやしない。(これは皆さん自身の経験や、身の回りの人々を見ての実体験から、そのとおりだと同意していただける事だと思う。換言すれば「常識」だ。)さらに言えば、その、ごく一部の犯罪者やその予備軍は、もう何も読まなくたって、犯罪を犯すのだと思う。そのくせ「○○というマンガを読んで影響を受けた」などと他人のせいにしたりするのだ、そいつらが! そういう、犯罪者の言い訳に騙されてはいけない。
あらゆる表現行為は、搾取(つまり、判断力のない人間を利用して脱がせたり虐待したり…という行為をする)を伴わない限り、無限に自由であるべきだというのがわたしの意見。その自由がなくなった時こそ、非合法のよりひどい世界が地下で繁栄することになる。青少年なんとか改正案…と言いだす人々は、どっちが地獄だと思っているのか。(文=目黒条