08の終わりに

もうすぐオバマが大統領に就任するドル安の国では、音楽においてはレコードカンパニーが力を失い、いわゆる「アーティスト性」にはなんの関心も愛情も持たないライセンサーが幅をきかせて数秒間のインパクトある音を「着メロ」「ゲーム音」等として切り売りするようになり、かと思うと新聞社も力を失いまともな特派員などを置かなくなり独自の取材→報道というのが消滅していき……などということがどんどん進行しているようで、そういうニュースを読んでるだけで絶望的になってくるような今日このごろだ。しかしわたしにしてからが、その記事をネットで読んでいるし。
2009年は日本とアメリカの関係も大きく変わってくることと思う。そもそも文化的な根腐れは日本の方が深刻に進行していたと思うのだけれど、彼我の相違を嘆くという時代ではもうなくなってきているのも事実。こと文化に関しては、世界のどこにおいても「斜に構えて」いる場合ではない、直球と正論こそが大事、という局面に来ているように思う。
危機的だ→で解決法は? となにか簡単な「処方箋」を持ってくる、という薄っぺらい新書のような論法は結構間違っていて、特に文化に関してはそういうことじゃないんだと思う。テレビに田母神を出して「ゆきゆきて神軍」的キャラクターに仕立ててエンターテインメントにしてしまっている、という日本の白痴的状況を見ていたらなんだか猛烈に腹がたってきて、直球と正論でもう一度きちんと構築しなおさないと本当にヤバいよ、と言いたくなった。論壇も文壇も存在しない今、ロジカルに考えることができる人の数が激減して、言論も文化も死に瀕している。なんとかしなければならない。処方箋は何もないけど、みんなで死ぬ気で考えよう、本当に。
拙著「カルトの島」において、わたしは最後に無所属民が大量虐殺されるという設定にしたが、今の日本がそのとおりの状況になって、派遣切りだとかなんとかで大量の人が路頭に迷っている。なにもわたしは、これに予言性があったなどと言いたいわけではない、これに関しては「普通の推論」の範囲で書いた部分だ。お正月休みを楽しむどころか死ぬかもしれない人が大勢いる中、とりあえず死なない人たちも、正月返上で、休み中にも猛勉して、これからどうするかを考えるべき時だと思う。(文=目黒条