バートルビー

 積んであった『バートルビーと仲間たち』(エンリーケ・ビラ=マタス)を一気読み。「書けない症候群に陥った作家たち」についての物語であるとのことで、そんなのを読んだら自分も書けなくなってしまうのではと警戒して、読むのを先延ばしにしていたのだが、ぜんぜん大丈夫、逆に挑発的な本だった。ネガティブ文学の世界文学史の系譜を愛してやまない向きは必読。それで、木村栄一先生の訳文は素晴らしい日本語だなあと感服し(私はスペイン語はまったくできないので、ラテンアメリカ文学は翻訳に頼るのみである)、ふと自分の本棚を見ると岩波文庫コルタサル短編集があってそれも木村先生訳なので、翻訳家繋がりで手を出したら、これがまた物凄い勢いで面白く、すっかり中毒になってしまった。本棚から見出したにもかかわらず新鮮に読んでるということは、積んじゃっていたのか? 幸せの青い鳥はすべてうちで飼育していた、という感じです。(文=目黒条