死の天使

 彩の国さいたま芸術劇場ヤン・ファーブル『死の天使』のゲネプロを拝見。イヴァナ・ヨゼクのソロ(ダンスというだけでなく、ものすごく演劇として演じている)と、映像の中のフォーサイスが呼応して作り上げるパワフルなアート作品。この類まれな作品にたまたま遭遇できるのは限られたキャパシティに入れる一部の人々だけなので、今喧伝することにはあまり意味がなかろうと思いますが、「こういうクオリティでやらなければ意味がない!」というショットを脊髄に打ち込まれたかのような衝撃だった。衝撃と羨望と嫉妬のあまり、ほとんど魂を抜かれ状態になった私。イヴァナさんの「生」のヴァイタリティも凄かったが、ものすごいプレゼンスで迫ってくるフォーサイスの「死」の使者みたいな姿が、まるで録画されたように脳内に取り憑いてしまった。深いところで影響を受けずにいられない、本物中の本物。(文=目黒条