エル・トポ

 猛暑の果ての思考停止から脱出したい…と考えていた昨日、また突然、なんの脈絡もなく「ホドロフスキー見るのはどう?」というアイデアが浮かんだ。まるで啓示のように!!
 『エル・トポ』。もちろん昔見た映画だけれど、当時の私は「なんかデタラメなイメージの羅列?」「あまり気分のいい映画じゃないなあ」といった感想しか持てなかった。しかし、現在の私の目で、そしてこういうセッティング(サブスタンスではなく猛暑のこと)で見たならきっと何か得るものがあるような予感がした。…果たして、その予感はグサグサに的中。カルトムービーという枠組みを取っぱらって、さまざまな先入観を取っぱらって、何も思考せずに見ると、あら不思議、たちまち思考が湧いてくる! 血に飢えた残虐さというモチーフから、世界や歴史や宗教やいろんなものに思いを馳せることができるマジカルな作品で、この間ヤン・ファーブルの「わたしは血」を見たときの興奮にかなり似たものを感じた。以前見た時は子供すぎて理解できなかっただけだったのだ! 素晴らしいじゃないかホドロフスキー監督! 変質者と芸術家は紙一重という、かなりギリギリの薄皮一枚のところでしっかり天才アーティスト枠に入っておられる。わたしの中で今頃大ヒットで、かなり夢中。今夜は、これまた目が節穴時代に見たつもりになってた『ホーリー・マウンテン』をビデオ屋で探してくるつもり。(文=目黒条