バービー

 2月1日から東京国際芸術祭2007がいよいよ開幕しますが、いきなりトップの次ぐらいに我らチームの『素晴らしい事が終わるとき――歴史とわたしとバービー人形』のリーディング公演が行われます。来週の金、土ですから皆さんどうぞよろしく!出演は大崎由利子さん、申瑞季さん、工藤倫子さんです。ANJのサイトをもう一度のせときます。ここには作者のシェリー・クレイマー(今回、来日するそうです)と、演出の工藤千夏さんの写真も出てますよ。http://tif.anj.or.jp/program/america.html
 内容は、一人のユダヤアメリカ人女性が、個人史とアメリカ史を交錯させながら、9・11について考察するというようなもの。1964年、十歳だった作者シェリーは、バービー人形のイブニングドレスを買ってもらう。アメリカの消費文化を享受していた彼女の、輝かしい物質的思い出に彩られたその年は、実はイランとの駐屯軍地位協定(SOFA)が締結された年だった――その年に、SOFAに怒ったホメイニ師が立ち上がって、のちにビン・ラディンにまでつながるイスラム革命の発端となったのだった… 
 こう書くと硬いようだけれど、実はバービーのストーリーを交えて語る大変面白い芝居です。バービーはもともとドイツの「ビルド・リリ」という人形をパクって作られた、などバービー誕生の経緯も語られて興味ぶかいです。ビルド・リリは「セクシーな成人女性」を人形にし、商品化した草分けらしく、マレーネ・ディートリッヒのメイクはこれにインスパイアされてできたという説もあるらしい。写真参照:http://www.dollreference.com/bild_lilli.html 考えてみたら、人形=子供のおもちゃだったところに、大人のファッションを持ち込んだのは、このあたりが最初だったのですね。そうやって女子たちを子供の時からシャブ漬けならぬファッション漬け・ファションヴィクティムに仕立てて、消費社会に組み込んでいく…バービーというのはそういうものだったわけです。(文=目黒条