楽園への疾走

 このところ、書く気になるような本にめぐり合ってなくて読書に関する記載を全然できずにいたのだけれど、久々のお奨め。J.G.バラード『楽園への疾走』(増田まもる訳・東京創元社刊)。マッド環境保護アクティビストの中年女医が、南の島でアホウドリの保護区をかちとり、いつの間にか狂ったカルトを形成しはじめる…という目黒条垂涎の内容で、こりゃあもう百パーセント「やられた!」という面白さです。暗黒版ロビンソン・クルーソー。わたしとしては、マッド・フェミニスト部分をもっともっとあざとくグロく油っこく展開していただいたものが読めたらもっと嬉しかったのだが、著者もヤバそうだから自粛したのかも。それにしてもバラードって1930年生まれのおじいさんなのに。凄い。こういうものが好きな人は絶対好きなはずの、必読作品。(文=目黒条