ル・クレジオ

きのうの朝日新聞の夕刊に「ル・クレジオ 異文化に溶けこむ原点」という記事が載っていた。来日したル・クレジオにインタビューした編集委員が書いたもの。しかし、この記事だけ読むと「植民地主義に翻弄されて育ち、世界のあちこちで暮らしてきた作家」というような印象しか残らないのでは? まあ実際そうなんだろうし、文字数の制限もあったんだろうけど、60年代、まだ確か二十代前半の頃に『調書 (le proces-verval)』というヌーヴォーロマン的な、都会の神経症を感じさせる作品でセンセーショナルにデビューしたル・クレジオが、現代文明への批判を経てメキシコの太陽に突破口を見出し、爾後、ワールドミュージックならぬ「ワールド文学」?作家になったということを書かないと面白くないでしょう。
私は、ル・クレジオについて偉そうなことを言う立場にないですが、仏文時代にとても親しんだ、愛着のある現代文学の作家です。(文=目黒条