notre musique

 『アワー・ミュージック』を見にシャンテシネに。『アワー…』というか、やはり『ノートル・ミュージック』と言おう、原○真二じゃなくてゴダールなんだから。
 もっと人を食ったようなものなのかと思ってたら、予想よりずっとストーリーのある作品で驚いた。ゴダールはアクチュエルな問題に正面から取り組み、老いをみじんも感じさせない。それどころか、ものすごい勢いで刺激的だ。ひとつひとつの場面が、ドラマツルグが知恵をしぼって考え出したダンスの舞台もかくや、というような高質なひらめきに満ちている。しかも、サラエボだし、パレスチナ問題だし。ネイティブ・アメリカンまで出てくる。今、民族紛争や自爆テロほど膠着状態で、深く悲しい問題はない。誰もそれに処方箋を用意できない。でも、芸術的にストレートに表現すればこうなる。今、これ以上のことをできる人はいないのではないかと思った。ゴダール翁に誰も勝てないというのは情ないことかもしれない。でも、この人に匹敵する次世代の芸術家って誰だろうと思うと、結構考えこんでしまうというのが現実だ。この高いハードルを誰か超えなければ! この挑発を受けてたち、ノートル・オートル・ミュージック(notre autre musique)つまり次世代の別の新しい音楽を奏でなくては!(文=目黒条