5×2

 銀座に行く用があったついでに『ふたりの5つの分かれ路』をシャンテシネで(言い訳まじり)。この邦題にはなんともゲッソリだけど(原題は『5×2』=サンクフォワドゥ)、フランソワ・オゾン監督にはこのところ惚れっぱなしなので、無理してでも映画館に足を運びお布施を払わねば、と思った。今回は、離婚の手続きをしている場面から逆行して、一組の男女の軌跡を計5つのシーンで切り取る、というコンセプトの作品でした。①いや〜な後味を残す、最後のお別れファック ②兄とその恋人の前で、夫がバイだとカミングアウトする変なホームパーティー ③妻が早産で病院へ行ったのに、夫は子供だの何だのという事が急に全部やんなっちゃって来院拒否した、子供誕生の日 ④結婚式で疲れて夫が寝ちゃったので、妻がひとりで夜の散歩に出て、行きずりの男のナンパに服従した新婚初夜 ⑤イタリアのリゾート地で二人が出会う場面 以上で五場面。…またも傑作! オゾン監督は、表層を突き抜けオゾン層をも突き抜け、寸鉄人を刺す紫外線のようなアイロニーで、一夫一婦制の欺瞞を冷徹に分析してみせた。最後、ビーチに夕陽が沈んでいくのを見ながら、わたしは心中ひそかに「これでいいのだ!」と叫んでしまった。表現、かくあるべし。何がいいって、この視点と分析力とセンスがいい。別に笑わせようとか「批判」行為をしようとかいうあざとい狙いは全然ないのに、笑えるしシニカルなのだ。なんでも「愛」の映画だと嘘ついて安っぽく売ろうとする宣伝に騙されずに、是非観てみてください。(文=目黒条