ターネーション

 渋谷のシネアミューズで『ターネーション』を見た。すごい!素晴らしい!大震撼。ジョナサン・カウエットという人が子供の頃から撮りだめたビデオを元に構成されている作品。彼のお母さんが元子役・モデルだったんだけど若いとき屋根から転落して(ドラッグがらみ?)大怪我をし、その際、脳に障害が出たかもってことで、のちに電気ショックの治療を受けて結局精神的にヤバい人になってしまう。ジョナサンは、お母さんに子育て能力がないので虐待をする養父母の家や祖父母の家で育ち、ゲイであることを自覚し、パンクに目覚め、ドラッグに手を出し、高校では芝居をやり(ブルーベルベットのミュージカル版!)…。言ってみればこの人は「パンク・テネシー・ウィリアムズ」で、この映画は『ガラスの動物園』の現代版なのだ。かわいそうな境遇→パンク→ドラッグ だけだとクリスチアーネFになってしまうところを、この人は表現に手を染め、映画を撮ったり役者をやったりして人生の突破口を見出し、表現をすることでギリギリ生きていけるようになったんだと思う。とても悲しい現実から逃避するかのごとく彼が追い求める、けばけばしいテレビ番組や星の王子さまや女優やなんかのきらびやかな映像がインサートされる。悲劇とポップカルチャーのコラージュ!なんともなんとも同時代で、悲しく、いとしく、胸打たれた。本当に素晴らしい作品なので、一人でも多くの人に見てほしい。(文=目黒条